現在は,家庭での弁当を原因とする食中毒は稀である。家庭でも微生物性食中毒への理解が深まり,安全面や保存面に注意して作られている。しかし,弁当は安全,保存と同時に栄養面,嗜好面も大切な要素で,生活様式や環境は時代とともに変化する一方,衛生の基本を守り作る必要がある。そのためには,作る場面だけでなく食材購入から喫食まで一連の知識と実践が求められる。微生物汚染対策は,①品質の良い食材を購入して自宅まで持ち帰る,②必要に応じて冷蔵庫,冷凍庫に保管して早めに使用する,③作る時は,初期菌数を少なくするための工夫する,④調理してから喫食するまで,細菌の増殖条件(水分,温度,栄養分と時間)のコントロールをする,⑤調理をする場の衛生管理,ヒトの健康管理をすることが大切である。市販の弁当と異なり家庭は調理環境,食材,価値観も千差万別で一様な管理は難しい。リスクを考える上では意外なところに見落としがあるため,家庭での実例を基に危害分析し,衛生対策を紹介する。