放線菌はグラム陽性細菌に分類される原核生物であり,ゲノムDNAのGC含量が高いことを特徴とする。放線菌は抗生物質をはじめとする多数の生理活性物質を生産する産業微生物として知られているが,原核生物であるにもかかわらず,真核生物の糸状菌に似た複雑な形態分化を行うことから,原核生物における細胞分化のモデル生物としても重要な菌群である。本稿では,放線菌で主要な属であるStreptomyces属からStreptomyces griseusを,希少放線菌に分類されるActinoplanes属からActinoplanes missouriensisを例として取り上げ,放線菌の形態分化の特徴と形態分化に関わる遺伝子群の発現制御機構について概説する。また,制御メカニズムの研究から見えてきた,放線菌の形態分化と二次代謝の関連性や生態学的な役割について紹介する。