細菌性食中毒は,日本では衛生管理が整っているものの未だ高い頻度で発生している。原因菌が食中毒を引き起こす機構は各々異なるが,いずれにしても食中毒を防ぐには,食品中に付着する細菌の増殖・バイオフィルム形成を抑制することが重要である。近年,サメの体表面加工が感染防御に対し,非常に理にかなった構造をしていることが明らかとなった。そこで,可塑性に富んだアクリル酸系樹脂を用いたサメ肌抗菌シートを作製し,食中毒菌に対する抗菌効果を検討した結果,静的培養条件において強く細胞増殖抑制効果を示すことを明らかにした。しかしながら,アクリル酸系樹脂のサメ肌抗菌シートは衛生・安全面から食品には使用できなかった。今回,食品にも使用可能なポリプロピレン素材の可撓性のある新たなサメ肌抗菌シートを作製したので,本稿では新しい抗菌シートを用いた食中毒菌に対する抗菌効果を報告する。