室内には多くの微生物(カビ,細菌等)や害虫(ダニ等)が生息しており,近年における住宅の気密性向上に伴い,家庭での対策はより重要な課題となっている。これらの微生物・害虫汚染を制御する有効な手法として,様々な天然物や化学物質などを用いた化学的防除法があるが,本講座では効果や安全性,持続性の高さから新たな手法として着目されている脂肪酸類に焦点をあてて,ラウリン酸カリウムによる畳表用防黴剤,2-ブチルオクタン酸によるダニ防除効果の高い食品包装資材,2-ヘキシルデカン酸カリウムによる除菌洗濯洗剤,直鎖型・分岐型脂肪酸塩によるコンタクトレンズの殺アメーバ剤への応用に係る研究事例について取り上げた。微生物種により効果の高い脂肪酸類は異なり,脂肪酸塩の鎖長が抗カビ効果や抗菌効果,抗アメーバ効果に大きな影響を与えていた。一方で室内塵性ダニに対しては脂肪酸塩では効果が低かったものの,脂肪酸で高い防除効果を発揮していた。