日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.52,No.10 (2024)

表題:
シリコーンシーラントの内部に伸張したCladosporium sphaerospermum菌糸の脱色に及ぼす弱アルカリ性次亜塩素酸ナトリウムとモノクロラミンの効果(短報)
著者:
髙橋和宏(岡山県工業技術センター),福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.10,pp.431−435(2024)

次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)とモノクロラミン(NH2Cl)の弱アルカリ性水溶液(pH 8.5;1,000 mg/L)が,シリコーンシーラント内部で増殖させたCladosporium sphaerospermum菌糸の脱色に及ぼす影響について検討した。C. sphaerospermumの胞子を寒天培地に散布し,その上にシリコーンシーラント試験片を置き,25℃で6日間培養することでC. sphaerospermum菌糸が増殖した試験片を得た。C. sphaerospermumの菌糸は試験片表面を覆うとともに内部へ約100μm伸長し,3日間の培養でその一部は約600μmの深さまで伸長した。このシリコーンシーラント試験片をNaOClおよびNH2Cl水溶液に浸漬し,脱色効果を5分間隔で撮影した。この画像の輝度値の反転値から脱色効果を定量的に評価した。NaOCl水溶液に9時間浸漬した試験片はほぼ完全に脱色された。一方,NH2Cl水溶液への浸漬3時間後の脱色率は約8%,6時間後の脱色率は約17%,9時間後の脱色率は約21%,15時間後の脱色率は約35%にとどまった。脱色曲線から算出された一次脱色速度定数は,NH2Cl水溶液に浸漬するよりもNaOCl水溶液に浸漬した方が8.4倍高かった。弱アルカリ性NaOCl水溶液はNH2Cl水溶液よりもシリコーンシーラント内部で増殖したC. sphaerospermum菌糸の脱色に効果的であった。

Key words:
Silicone rubber sealant(シリコーンシーラント)/Cladosporium sphaerospermum mycelium(クラドスポリウム スフェロスパーマム菌糸)/Decolorization(脱色)/Sodium hypochlorite(次亜塩素酸ナトリウム)/Monochloramine(モノクロラミン).