次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)とモノクロラミン(NH2Cl)の弱アルカリ性水溶液(pH 8.5;1,000 mg/L)が,シリコーンシーラント内部で増殖させたCladosporium sphaerospermum菌糸の脱色に及ぼす影響について検討した。C. sphaerospermumの胞子を寒天培地に散布し,その上にシリコーンシーラント試験片を置き,25℃で6日間培養することでC. sphaerospermum菌糸が増殖した試験片を得た。C. sphaerospermumの菌糸は試験片表面を覆うとともに内部へ約100μm伸長し,3日間の培養でその一部は約600μmの深さまで伸長した。このシリコーンシーラント試験片をNaOClおよびNH2Cl水溶液に浸漬し,脱色効果を5分間隔で撮影した。この画像の輝度値の反転値から脱色効果を定量的に評価した。NaOCl水溶液に9時間浸漬した試験片はほぼ完全に脱色された。一方,NH2Cl水溶液への浸漬3時間後の脱色率は約8%,6時間後の脱色率は約17%,9時間後の脱色率は約21%,15時間後の脱色率は約35%にとどまった。脱色曲線から算出された一次脱色速度定数は,NH2Cl水溶液に浸漬するよりもNaOCl水溶液に浸漬した方が8.4倍高かった。弱アルカリ性NaOCl水溶液はNH2Cl水溶液よりもシリコーンシーラント内部で増殖したC. sphaerospermum菌糸の脱色に効果的であった。