口腔微生物とそれらに関連する歯科疾患は,口腔内に留まらず全身へ及ぼす様々な影響について報告されている。口腔微生物制御の重要性がより明確になる一方,歯科疾患の罹患率は未だ高く,高齢層ではう蝕・歯周病ともに近年増加傾向である。活性酸素の一種であり過酸化水素の光分解によって生じるヒドロキシルラジカルを応用したラジカル殺菌技術は,歯周病原細菌やう蝕関連細菌をはじめとする様々な口腔微生物およびそのバイオフィルムを効果的に殺菌できることを報告してきた。現在,本殺菌技術を応用した歯周病治療器は治験を通してその優れた治療効果が証明され,医療機器として承認を受け,今春販売を開始したところである。また,う蝕治療や近年問題となっているインプラント周囲炎,義歯装着者の口腔衛生状態向上を目的とした義歯洗浄への応用を視野に更なる研究を進めており,本殺菌技術はこれまでにない網羅的な口腔微生物制御法として期待される。