昆虫の翅表面にはナノサイズの微細突起構造があり,この構造により菌や真菌に物理的なダメージを与える事で抗微生物機能を発揮するという概念がある。株式会社KRIではこの概念を簡易なプロセスで人工的に再現する技術を開発した。この技術で形成した機能表面は,薬剤による化学反応や熱,光等のエネルギーを用いずに長期的な抗菌/防カビ/抗ウイルス効果を発揮する事ができる。本稿では,昆虫の翅の抗微生物機能と翅の微細構造デザインとの関係,その結果から導かれた抗微生物性能を発揮するための微細構造のデザイン要項,そしてその要項に基づき形成したナノ構造の抗微生物活性について議論した。更に本技術の今後の展望として,任意の微生物を選択的に不活化する技術構築の可能性に触れ,技術実現に有用なツールとなり得るマイクロリアクターを用いたフロー合成方についてご紹介する。