日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.53,No.1 (2025)

表題:
歯科医療分野における微生物制御
[10]口腔内細菌叢と腸内細菌叢の関連性
著者:
庭野吉己(秀明大学 看護学部 専門基礎分野)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.53,No.1,pp.15−23(2025)

口腔内には腸内フローラに次ぐ細菌数が存在すると言われる。口腔内や腸内の正常な細菌叢の構成異常をdysbiosisと言い,口腔内細菌叢のdysbiosisによって引き起こされる疾患の一つに歯周病がある。われわれは,1日当たりおおよそ600 mLの唾液を飲み込むが,その唾液1 mL中には109個にいたる細菌が存在する。従って,唾液中に存在する歯周病原因菌などが胃酸の影響を回避して腸内まで到達し,腸内細菌叢に影響を与える可能性は否定できない。事実,バイオフィルム状に培養した歯周病原因菌の一つであるPorphyromonas gingivalisはその他の歯周病細菌と比較して耐酸性が高いことが示されている。加えて,歯周疾患病変部位からのLPSや炎症性サイトカインの血中移行を介して腸管免疫および腸内細菌叢に影響を与える可能性もある。本稿では口腔内細菌叢,腸内細菌叢,全身性疾患の関係を示唆する研究を糖尿病,動脈硬化性疾患および関節リウマチを例に紹介していく。

Key words:
Oral bacterial flora(口腔内細菌叢)/Intestinal bacterial flora(腸内細菌叢)/Diabetes(糖尿病)/Arteriosclerotic diseases(動脈硬化性疾患)/Rheumatoid arthritis(関節リウマチ).