地球上のあらゆる場所において,微生物は多種多様な群集を形成する。特に土壌では,多種多様な細菌と糸状菌が存在し,バイオマスの大半を占める。それら微生物群集の機能は,有機物の分解,栄養循環の制御,植物の生長,土壌構造の生成など多岐に渡り生態系の維持に貢献する。その中でも細菌と糸状菌の相互作用とバランスは,微生物群集の構成と機能にとって重要であることが明らかになってきた。しかし,細菌と糸状菌の共生が,微生物群集の構成と機能に与える影響はいまだ明らかになっていない。細菌と糸状菌の共生相互作用は,ポジティブなものからネガティブなものまで様々で,自由生活しているものから植物根圏のように宿主と共生しているものもある。これまでに私は,寒天培地上での糸状菌Aspergillus nidulansと細菌Bacillus subtilisの共培養系をモデルとして,細菌が菌糸に沿って移動・拡散し生存空間を広げることを示した。一方,細菌が菌糸先端まで移動し,ビタミンB1(チアミン)を糸状菌に与えて菌糸生長を促すことを発見し,空間的・代謝的相互作用からなる相利共生を提唱した。