公共用水域の水質汚濁を防止するため,近年,放流水の基準が大腸菌群数から大腸菌数へと改正されている。本研究では,浴槽水中の大腸菌検出法を検討するため,市販の特定酵素基質寒天培地の特徴づけとコロニー数の比較を行い,実際の浴槽水における大腸菌の検出状況を定量・定性試験により調査した。その結果,培地によってコロニーの識別のしやすさや生育するコロニー数に差があり,一部の培地では大腸菌が非定型色を示すことが分かった。実際の浴槽水126検体において,13検体(10.3%)から大腸菌が,15検体(11.9%)から大腸菌群が検出された。青色を呈するコロニーは大腸菌であり,赤色を呈するコロニーはエンテロバクター属,シトロバクター属,セラチア属が多かった。また,大腸菌の定性試験では,温泉水では偽陰性となる可能性があることが明らかとなった。