日本防菌防黴学会

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防菌防黴誌(和文誌)

Vol. 35, No.3 (2007)



表 題 塩酸を原料にして製造した微酸性電解水による大腸菌の殺菌メカニズムについて
著 者 鈴木 潔 (鈴木食品微生物研究所), 中村悌一, 鴨志田真弓, 浅野祐三, 冨田 守 (森永乳業(株)食品総合研究所, 基盤研究室)
掲 載 防菌防黴, Vol.35, No.3, pp.131-137 (2007)

微酸性電解水 (SlAEW, HOCl) と E. coli を混合したとき, 残留塩素濃度は, 時間 (対数) に対し直線的に減少し, その65%が最初の10秒間で消費された。 E. coli と SlAEW を混合した直後に生菌数は減少し, 1秒間処理から10秒間処理まで生残菌数に有意差は無かった (P<0.05)。 外膜の主成分である糖脂質は, SlAEW に対して安定であった。 SlAEW は, ATP-ase を急速に失活させたが, ATP を失活させなかった。 SlAEW で E. coli を1分間処理することにより, E. coli を ATP 抽出試薬で処理した試料とほぼ同等量の ATP が菌懸濁液中に遊離した。 SlAEW の OH ラジカルは E. coli 懸濁液添加により増大しなかった。 以上のことから, SlAEW の殺菌メカニズムは, E. coli 内外膜のチャンネルやポーリン蛋白質の立体構造が SlAEW により変えられ, 開放状態にされて ATP を放出する。 次いで分子濃度勾配により菌体内に入った HOCl により, ATP-ase などの酵素類が失活させられて菌は, 完全な死に到ると考えられる。
Key words Slightly Acidic Electrolyzed Water (微酸性電解水)/Bactericidal mechanism (殺菌メカニズ ム)/Chlorine (塩素)/E. coli (大腸菌)/ATP ( アデノシントリホスフェイト).