日本防菌防黴学会

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防菌防黴誌(和文誌)

Vol. 40, No.9 (2012)



表 題 細菌の環境認識と適応[2] 鞭毛の形成と機能調節
著 者 篠田純男(岡山大学インド感染症共同研究センター)
掲 載 防菌防黴,Vol.40,No.9,pp.587-595(2012)

鞭毛は細菌の運動機関であり,多くの細菌では基底部のH駆動力による回転運動に運動能力につながっているが,ビブリオ属菌などのようにNa駆動力を利用してものもある。ビブリオ属菌にはコレラ菌のように極単毛性鞭毛のみをもつ種もあるが,腸炎ビブリオやVibrio alginolyticusなど数種の海洋種は極単毛以外に粘度の高い環境,すなわち寒天培地などでは腸内細菌などの周毛に似た側毛を菌体周囲に生じる。このうち,極単毛はNa+駆動性,側毛はH+駆動である。側毛は常時形成されているのではなく,粘度の上昇(固体表面への接触)による極単毛回転の低下が感知されることによるものと考えられている。
これらビブリオの2種の鞭毛を中心に,その形成に影響する因子,病原性への関与などを解説した。

Key words Flagella(鞭毛)/Polar monotrichous flagella(極単毛)/Lateral flagella(側毛)/Vibrio(ビブリオ)/Proton motive force(H駆動力)/Sodium ion motive force(Na駆動力)/Swarming(遊走性).